2013年10月9日水曜日

【ちょっと気になるアート入門7:2+2=5 戦争に翻弄された音楽家】

facebookに投稿をした以前のものを、ブログ転載を機にバージョンアップさせました。
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パソナホール:水上ステージ


秋山ゆかりさんのレクチャーコンサート「2+2=5 戦争に翻弄された音楽家」に行ってきました。

レクチャーコンサートとは、演奏と、演奏された曲にかかわる作曲家、演奏家など
音楽のつくられた背景を語ってもらう、いわば一粒で二度おいしいコンサート。

秋山さんの経歴を知れば知るほど、驚くことばかり。

事業開発系コンサルタントでありながら、ソプラノ歌手。
大学で教えながら、新刊も出す。一体、1人で何役こなすつもり?・・・(^_^;)


いま、アーティストがなんらかの運動やっていても、
本人はじめ、死ぬことはないと思っているでしょう。

でも、今回、紹介してくれた音楽家たちは、
生死をかけて亡命したり、妻を当局に売ったりなどして、
まさに、身を削って、ぎりぎりの中で、自分の表現と向き合ってきた。

戦争がなかったら、生まれなかった音楽。
いろいろと、考えされられました。

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戦争でクラシック音楽が、プロパガンダとして使われたり、
戦争がきっかけで音楽家の生き方が大きく変わりました。

特に、帝政ロシアからソ連誕生、第二次世界大戦を経て、冷戦終結まで、
戦争に翻弄された音楽家が居なければ、今耳にしているような音楽は存在していません。

亡命の地アメリカで生きていくためのお金を稼ぐ術として、
まさに、命を削って、映画音楽を作りまくる、そして、
それがアメリカの東側へのプロパガンダとして使われました。

たとえば、は作曲家としても、演奏家としても有名でしたが、
亡命に際しピアノメーカーのスタインウェイに多額の借金をした結果、
年間200回以上のコンサートに出演せざるを得なくなり、
結果、10年以上も作曲ができなくなり、失意の中に生きざるを得ませんでした。

たとえば、スターリンに愛されたグリエールですが、
ドイツ開戦の時にロシアが苦戦し、そのロシア国民を鼓舞するための曲を
依頼され作ったのが、「コロラトゥーラソプラノのための協奏曲」。

歌詞のないヴォカリーズ(あ~で全部歌います)にしたのは、
万が一スターリンが、歌詞が気に入らなければ迫害を受けるため、
無理やりソプラノを楽器に見立てた協奏曲を作ったのです
(声楽の協奏曲はこの曲しかないそうです)。

この戦略が見事成功し、スターリンに社会主義の音楽家第一号と認定されました。


タイトルの「2+2=5」について

1928年にソ連のスターリン政権が、
5か年計画を4年で達成するスローガンとして「2+2=5」を掲げました。

この成功によりソ連型社会主義と呼ばれる独自の社会体制を確立し、
社会主義と資本主義の対立の序曲が始まり、その結果、多くの戦争を生み出しました。

この「2+2=5」のフレーズを世界的に有名にしたのは、
20世紀最高の小説と呼ばれるジョージ・オーウェルの「1984年」が
小説を象徴するフレーズとして「2+2=5」を使ったからです。

「2+2=4」と言えないのが戦争。

そんな矛盾を抱えながら、生きるために音楽家たちが下した
それぞれの決断と生き方を、音楽の裏にある物語として伝えたい。
そんな思いから、テーマとして掲げさせていただきました

演目: 

第一部
◆ チャイコフスキー バレエ「白鳥の湖」より 「第二幕 情景」
◆ リムスキー=コルサコフ 歌劇「サルタン皇帝」より 「熊蜂の飛行」    
◆ ラフマニノフ 「楽興の時作品16 第4番」    
◆ ショスタコヴィッチ 「ブロークの7つの詩」より 「オフィーリアの歌」 
◆ ストラヴィンスキー バレエ「プルチネルラ」組曲より 「II セレナータ」
◆ ストラヴィンスキー 歌劇「ナイチンゲール」より 「ナイチンゲールの歌」   
◆ プロコフィエフ ソナタ第6番「戦争ソナタ第四楽章」 
◆ ラフマニノフ 「14のロマンス」より 「ヴォカリーズ」 (Op.34-14)     

第二部
◆ スタイナー 映画「風と共に去りぬ」より 「タラのテーマ」 
◆ グリエール 「コロラトゥーラ・ソプラノのための協奏曲 Op.82」 より「第一楽章 アンダンテ」
◆ リムスキー=コルサコフ 「グリンカの主題による変奏曲」      
◆ スクリャービン 「2つの左手のための小品」
◆ バーンスタイン 歌劇「キャンディード」より 「着飾ってきらびやかに」
◆ ハチャトゥリアン バレエ「ガヤネー」より 「剣の舞」   
◆ ピアソラ 「リベルタンゴ」

                          (秋山ゆかり公式ブログより転載、一部改編)
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コンサートの最後に、“The War is Over”を持ってくる構成がまた素晴らしかった。

開催告知ポスター 兵士と音楽のコントラストがなんともせつない







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